注意点は、
(R)-MTPAClを用いると(S)-MTPAエステル体ができ、
(S)-MTPAClを用いると(R)-MTPAエステル体ができることです。
上図、黄色で示した部分に注目。13位水素、炭素、MTPAエステルケトン、トリフルオロメチル基は、同一平面(MTPA平面)上に存在しています。また、(S)-MTPAエステル体では、その平面を境に、メトキシ基が奥に、フェニル基が手前に配置し、(R)-MTPAエステル体では、逆になっています。したがって、(S)-MTPAエステル体では、MTPA平面を境にして、フェニル基と同じ側に存在する14位プロトンが遮蔽を受け、1H NMRにおいて、高磁場シフトすると考えられます。他方、(R)-MTPAエステル体では、12位以下、キノリチジンユニットのプロトンが高磁場シフトすると考えられます。
上図は、実際に1H NMRを測定した結果です。
(S)-MTPAエステル体では、(R)-MTPAエステル体より14位メチルのケミカルシフトが小さい値をとり、
(R)-MTPAエステル体では(S)-MTPAエステル体より12位以下、キノリチジンユニットが小さい値をとっていることがわかります。
ここで、(S)-MTPAエステル体から(R)-MTPAエステル体のケミカルシフトを引いた値Δδを求めます。(右上図)
左上図のようにMTPAエステル体を配置させたとき、右側の置換基のΔδ値が正、左側の置換基のΔδが負になっているならば、もとの水酸基の絶対立体配置は正しく表示されていることになります。
もし、Δδが逆になっているならば、初めに仮定していた水酸基の絶対立体配置は、逆ということす。
hydrosenepodine Hについては、これまで、13Sの構造を用いて説明をしてきましたが、最終的に、正しい構造であったことが、右上図よりわかります。